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建設業許可の概要

Ⅰ 目的・許可種別

 建設業法の目的は、良質な業者の育成と請負契約の適正化により建設工事の適正な施工を確保を目指すことです。それによって下請業者の経営安定も目指しています。

 そのため一般的には禁止されている建設工事を許可制度を通じて、大規模工事については規制し、社会的影響力が小さい軽微な工事(工事金額が500万円未満。但し建築一式工事(※1)の場合は1,500万円未満(※2))については、目的が達成できない怖れが少ないため、許可を得ずに工事ができることになっています。

 しかし、元請工事1件あたりの下請発注総額が4,500万円以上(建築一式工事については、7,000万円以上)(※3)の大規模工事や500万円以上の小中規模工事については、元請業者が、下請業者に工事を分散して発注する場合など、元請業者の経営状況や工事のやり方によって、下請業者に深刻な影響を与える怖れがあります。
 また発注者の利益保護のためにも、建設業許可制度を取ることによって、元請業者には高いレベルの経営体制や財政的裏付けが求められています。

 建設業許可は、発注規模により元請工事1件あたりの下請発注総額が、500万円以上4,500万円未満では、「一般建設業許可」(以下「一般許可」という)、4,500万円以上 (建築一式工事については、7,000万円以上) は「特定建設業許可」(以下「特定許可」という)に区分されます。

 また本社所在都道府県内に営業所(※4)があるのか、それとも2つ以上の都道府県内にもあるのかによって、都道府県知事許可(以下「知事許可」という)か国土交通大臣許可(以下「大臣許可」という)になるのかが、異なってきます。しかし、知事許可と大臣許可の区分により、工事施工できる箇所に制限があるわけではありませんし、請負金額に差があるわけでもありません。本店が知事許可を受け、本店で見積り・契約などを行うのであれば、工事現場がどの都道府県にあっても特に制約はありません。

 現在個人事業主の方が、新たに建設業許可を取得する場合は、総合的に「知事許可-一般建設業許可」の組み合わせから始められるのが妥当です。

 特に近年は、元請建設業者が、軽微な工事でもコンプライアンスの観点から、許可業者に発注しているところもあります。また、金融機関からの借り入れに際しても、許可を持っていることを判断基準に相談が進むことが多くなっています。許可については、様々な条件があり、申請手続きも複雑です。また、地方公共団体の入札参加資格については、経営事項審査が前提となっており、経営的視点も必要です。

 建設工事の種類は、29種類(建築一式工事、土木一式工事、大工工事、左官工事、とび・土工・コンクリート工事、石工事、屋根工事、電気工事、管工事、タイル・レンガ・ブロック工事、鋼構造物工事、鉄筋工事、舗装工事、しゅんせつ工事、板金工事、ガラス工事、塗装工事、防水工事、内装仕上工事、機械器具設置工事、熱絶縁工事、電気通信工事、造園工事、さく井工事、建具工事、水道施設工事、消防施設工事、清掃施設工事、解体工事)に分かれており、営業しようとする業種ごとに許可を受ける必要があります。

 

 (金額は税込み)

 許可不要(軽微な工事)一般建設業許可特定建設業許可
建築一式工事1,500万円未満等 ※21,500万円以上
7,000万円未満
7,000万円以上 ※5
土木一式工事  500万円未満500万円以上
4,500万円未満
4,500万円以上 ※5
その他27種類の建設工事  500万円未満500万円以上
4,500万円未満
4,500万円以上 ※5

                                           
都道府県知事許可国土交通大臣許可
都道府県内に1カ所の営業所(※4)複数の都道府県内に各2つ以上の営業所(※4)

※1:一式工事とは、「総合的な企画、指導、調整のもとに建設工作物を完成させること
※2:工事延べ面積が150㎡に満たない木造住宅工事を含む。
※3:
令和4年11月18日「建設業法施行令の一部を改正する政令」が公布、令和5年1月1日施行。
※4:営業所とは、建設工事にかかる見積り、入札、契約手続きなどの事務手続きが反復継続してできる場所で、単なる資材置き場や現場事務所ではない。
※5:特定許可取得後は、特に請負総額の上限・下限共なくなる。

Ⅱ 許可条件

1 適正な経営体制があること

 H2年10月から施行された許可要件では、かなり詳細な改正がされています。特に「経営業務の管理責任者(経管)」の要件について、従来要件を緩和し、合理化されることになりました。同時に(ロ)ように組織全体で適切な経営管理体制が認められる場合も許可されることとなりました。

(イ)又は(ロ)のいずれかに該当する必要があります。(建設業法施行規則第7条)

(イ)常勤役員等のうち一人が次のいずれかに該当する者であること
(1)建設業に関し5年以上の経営業務の管理責任者としての経験を有する者
(2)建設業に関し経営業務の管理責任者に準ずる地位にある者(経営業務を執行する権限の委任を受けた者に限る)として5年以上経営業務を管理した経験を有する者
(3)建設業に関し経営業務の管理責任者に準ずる地位にある者として6年以上経営業務の管理責任者を補佐する業務に従事した経験を有する者  

※基本的には(1)が柱となり、その部分の要件緩和として、「準ずる地位」にまで広げたのが、(2)、(3)です。

(ロ )以下の(1)又は(2)のいずれかに該当する者であって、かつ、当該常勤役員等を直接に補佐する者を置くこと。
(1)建設業に関し2年以上役員等としての経験を有し、かつ、5年以上役員等又は役員等に次ぐ職制上の地位にある者(財務管理、労務管理又は業務運営を担当する者に限る)としての経験を有する者
(2)5年以上役員等としての経験を有し、かつ、建設業に関し、2年以上役員等としての経験を有する者

 ※これは中規模以上の会社を想定し、建設業以外の役員等の経験を加えて、要件を緩和しています。それと共にこれを補う経営体制として、「当該常勤役員等を直接に補佐する者を置くこと」を要件としています。

 つまり(ロ)の場合は、最低2年間の建設業に関して経験のある5年以上の常勤役員等とそれに次ぐ職制上の地位にあり、直接補佐する者(部長等)の組み合わせによる体制が必要になります。補佐する者については、建設業に関し「財務管理」「労務管理」「業務運営」のそれぞれについて、5年以上の経験が必要となりますが、3人必要なわけではなく、例えば「管理部長」がそれらを兼務しているような場合は一人で良いことになります。

 (イ)(ロ)共に、経営業務管理責任者等の確認には客観的な証明が必要となります。(ロ)の場合は、常勤役員等プラスそれを直接に補佐する者が必要となりますが、補佐経験等については、公的な証明がないため、組織図や職務の分掌規程などの書類が必要な場合もあり、かなり煩雑な作業となります。個人事業主等では、工事請負契約書、注文書・請書などの書類で明らかにする必要があります。

2 適切な社会保険に加入していること

従来、社会保険未加入は、加入指導対象ではありましたが、許可申請等そのものは可能でした。しかし、今回の改正(令和2年10月施行)では、社会の要請として未加入業者には、許可そのものを与えないこととなりました。

 社会保険とは「雇用保険」「健康保険」「厚生年金保険」の3保険のことです。加入義務があるかどうかは、法人と個人、経営者と労働者、常時雇用人数などにより異なってきますので、3保険共に加入できるのは、法人で1人以上の常用雇用者がいる場合と個人事業主又は一人親方で5人以上の常用雇用者がいる場合に限られます。

 詳しくは、雇用保険はハローワークへ、健康保険と厚生年金保険は年金事務所へ問い合わせてください。

3 営業所ごとに専任技術者を配置すること

 専任技術者は、許可を受けようとする営業所(建設工事にかかる見積り、入札、契約締結などを反復継続しておこなう所で、単なる現場事務所等ではない)ごとに配置される業種に応じた「専任」の技術者で、「常勤」である必要があります。専任技術者がいない場合は許可されません。

 一般許可・特定許可の区分により資格要件が異なります。一般許可では、一定の国家資格者以外に高校・大学の指定学科の卒業や10年以上の実務経験者がなれますが、特定許可では、一定の1級国家資格者と既に一般許可での専任技術者としての一定の実務経験がある者などかなり厳しい要件が必要となります。

 また、専任技術者は、営業所ごとに専任である必要があり、専任とは、当該営業所に常勤し、その職務に従事している必要があります。


<参考:専任技術者と現場の技術者との関係>
 原則として専任技術者は、現場の配置技術者(主任技術者、監理技術者)になることはできません。
 元々、許可を受けた建設業者が建設工事を施工する場合は、すべての現場に「主任技術者」(一般建設業の専任技術者になれる資格が必要)を配置しなければならず、特に元請工事において、工事1件当たりの下請業者への発注総額が、4千5百万円以上(建築一式工事の場合は7千万円以上)となる場合は、主任技術者ではなく、「監理技術者」を配置しなければなりません。

 監理技術者を配置すべき工事を施工するには、特定建設業許可が必要です。監理技術者は1級土木施工管理技士等の1級国家資格保有者で「管理技術者講習」を終了した方です(受講した日の翌年1月1日から5年間有効)。

 配置技術者(主任技術者、監理技術者)の現場専任が求められるのは、公共性のある重要な工事の内、1件の請負金額で4千万円以上(建築一式は、8千万円以上)の工事についてです。
 これについては、工事の公共性に重点があるので、元請・下請の区別はなく適用されます。

 ただし、専任制については、技術研修等のため合理的な範囲内で短期間工事現場を離れる等は可能ですし、また改正建設業法では、「密接な関係のある工事」かつ「同一の場所又は近接した場所」であれば主任技術者一人での現場兼任が認められます。監理技術者についてもより厳しい条件ではありますが、専任義務の緩和が認められています。  

4 請負契約に関して、誠実性を有していること

 許可申請を行う者が「請負契約に関して不正または、不誠実な行為をするおそれがないこと」が許可要件となっています。これは、建設工事が、取引の開始から、竣工・引き渡しが長期間に及び金額も大きいことから、発注者を保護する必要性が高く、前提として高い信用力が必要となるからです。

 不正な行為とは、①請負契約の締結又は履行の際に詐欺、脅迫、横領等の違法行為、不誠実な行為とは、②工事内容、工期、天災等不可抗力による損害の負担等について請負契約に違反する行為、③申請者が、建築士法、宅地建物取引業法で不正または不誠実な行為を行ったために免許等の取消処分を受けて5年を経過しない者である場合

 この場合の申請者の範囲は、申請を行う法人及び法人の役員等、令3条使用人(※4)、個人事業主及び個人事業主の支配人が含まれます。
 ※4:建設業法施行令第三条の使用人としては、支配人、支店長、営業所長が該当します。

5 財産的基礎又は金銭的信用を有していること

 建設工事を遂行するには、多額の資金が必要となります。また工事請負契約を反復継続的に行うことができる営業所も必要となりますので、許可を受ける段階で財政的な基礎が備わっている必要があります。
 また金銭的信用については、一般許可と特定許可とで大きく異なります。

<一般許可>いずれかを充たす必要があります。
 ①自己資本の額が500万円以上ある者
  自己資本の額とは、貸借対照表の純資産合計の額です。許可申請直前の貸借対照表で判断さ れます。
 ②500万円以上の資金調達能力があると認められる者
  原則的に金融機関の預金残高証明書で確認されます。
 ③許可申請直前の5年間に許可を受けて継続して建設業の経営をしていた者
  更新時の金銭的信用の確認方法として用いられますが、一般許可では定められた届出が行わ れている限りは、更新時に確認は行われません。

<特定許可>以下の条件をすべて満たす必要があります。
 特定許可は大型の建設工事に対し、発注者や下請業者を保護する目的で制度化されたもので、該当業者は大型の工事支払いに耐えるような自己資本の充実が求められます。

 ①資本金の額が、2,000万円以上あること。
②自己資本の額(純資産合計)4,000万円以上あること。
 ③欠損金額が資本金の額の20%以内であること。
 ④流動比率が75%以上であること。

<営業所の実在性>
 営業所(反復継続的に工事請負契約が締結される場所)が実在していることが、財産要件の一つとされています。一括下請負がされるようなペーパーカンパニーでなく、実際の実在を確認するため賃貸契約書の確認等(自治体により異なる)や建物外観、事務所内の写真等が求められます。

6 欠格要件に該当しないこと

 役員等が建設業法第8条各号の欠格要件に該当しないことを誓約書(同施行規則別記様式第6号)を提出、また「登記されていないことの証明書」(成年被後見人及び被保佐人に該当しない旨の登記事項証明書)及び「身分証明書」(成年被後見人及び被保佐人に該当しない旨及び破産者で復権を得ない者に該当しない旨の証明書)の原本を両方提出する必要があります。
 前者については、平成27年より暴力団排除の徹底から従来の取締役や執行役に加え、それと同等以上の支配力を有する者に対象が拡大されています。

 後者については、従来、禁治産者(成年被後見人とみなされる者)及び準禁治産者(被保佐人とみなされる者)が戸籍(各市町村の戸籍担当部署の管轄)への記録されてきましたが、平成12年4月1日以降は新しい成年後見制度が施行となり、東京法務局において一括して後見登録されるようになりました。

 したがって、新制度施行前は、本籍のある市町村へ「身分証明書」を請求し、施行後は「登記されていないことの証明書」を東京法務局(窓口請求の場合は各地方法務局戸籍課で可能)へ郵送請求することになります。

 なお、令和元年9月より「成年被後見人及び被保佐人」に該当する場合であっても、一律に
不許可とされるのではなく、建設業許可事務ガイドラインに規定される「医師の診断書」に基づき個別審査されることとなりました。

許可の有効期間は5年間で、更新は満了日の30日前までに手続きをおこなう必要があります。

以上が建設業許可申請の概略になります。


<参考-当事務所の建設業許可申請等報酬額>

  申請種別     料     金      備    考
都道府県知事許可申請新規:法人150,000円、個人120,000円
更新:法人100,000円、個人80,000円
※京都府手数料(一般又は特定:新規9万円、更新5万円、業種追加5万円)
国土交通大臣許可申請新規:法人200,000円
更新:法人150,000円
※国手数料(一般又は特定:新規15万円、更新5万円、業種追加5万円)
変更・追加変更届(経営業務管理責任者等)30,000円~
業種追加70,000円
経営事項審査経営状況分析申請35,000円
経営事項審査申請150,000円
入札参加資格申請建設工事等入札資格申請50,000円


※以上は基本報酬となっています。なお、京都府、国手数料については、法定手数料として申請時に必要となりますので、事前にお預かりさせていただきます。